《製作のこだわり・1》芯の板紙の事
芯になる厚紙には、密度が高く特に固い板紙を使用しています。
作りたい箱が決まったら、まず設計図を書きます。置く場所に合わせて外寸から計算する時、入れたい物に合わせて内寸から計算する時、どちらからでも設計可能です。紙の厚みも考慮に入れて、できあがった姿を想像しながら寸法を決めていきます。
寸法が決まったら、次はパーツを切り出していきます。1mmずれたら蓋が閉まらなくなったり、ガタつきの原因になります。切り口が斜めにならないように気を付けながら、正確に切り出していきます。
厚紙を切り終わったら、次は組み立てです。水を付ける事で粘着力の出る紙テープを使って組み立てていきます。
この時も、角が90度になるように、高さが全て揃うように気を付けながら組み立てていきます。万が一ガタつきが出る時は細く切った紙を貼り合わせ、微妙な調節をしていきます。
組み立て終われば、次は和紙でくるむ作業です。
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《製作のこだわり・2》和紙と柿渋塗りの事
厚紙を組み立てたら、次はボンドで和紙を貼っていきます。和紙できれいにくるむのが、工程の中で一番難しい所です。どうやれば隙間なくくるむ事ができるのか、ちょっとしたパズルのようです。綺麗に早くくるむ事ができるように日々工夫をしています。
その後、重しをしてしばらく寝かせます。紙製品の一番の敵である「反り」を防ぐためです。紙は水分で伸び、乾く時に片面だけが縮んで反っていきます。真っすぐに保って乾燥させる事で反りを防ぎます。
乾燥を終えたら次は和紙に柿渋を塗ります。少なくとも3回は塗り重ねる事で、独特の艶と風合いが生まれます。
柿渋は、古くは和傘の塗装として使われていたように和紙に防水性と強靭さを持たせます。他にも柿渋には抗菌・抗ウイルス効果、防カビ効果、消臭効果などがあると言われています。
和紙と柿渋という日本の長い伝統のある素材の力を借りる事で、作品をより力強いものにする事ができたと感じています。
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《製作のこだわり・3》イラストの事
一辺一辺の作品に使用されているイラストは全て、作家本人が描いています。
子供の頃から絵を描くのが好きで、40年近く描き続けています。
描くのは紙にペンで。描きたいモチーフが決まったら色々な角度から何枚も練習して特徴を掴みます。本番では水彩紙に、極細の黒ボールペン1色で描きます。下描きはしていますが、模様はその時のフィーリングで描く事も多いです。
描きあがったらパソコンに取り込み、着彩したり、箱にふさわしい柄になるように加工します。色の加減やモチーフの配置には何か理論があるわけではなく、あくまで自分が丁度良いと思えるバランスになるまで調整します。
仕上がったイラストを出力するのですが、コピー用紙のままでは白いので、コーヒーに漬けてアンティーク調の色を付けます。
そして、ようやく出来上がったイラストを箱に貼り、コーティング剤を塗ります。このコーティング剤は筆跡が残るので、あえてなめらかにせず縦横の筆跡を残し、布のような手触りに仕上げます。
最後に金具をネジで付けてついに完成です。数多の工程を経て出来上がった箱はどれも手放し難い程ですが、持ち主様のところでお役に立つ事を願って送り出します。